Leo Ashizawaの「元気でやってるよ。」「元気でやってけよ。」

自分がやりたいことを少しでも伝えるには、自分自身の中でそれなりに土台が必要です。僕の土台はこのメッセージ。これまでお世話になった人へ。これからお世話になるであろう人へ。ロンドンで活動する役者、Leo Ashizawaからの便り。

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ロードトリップ 最終話

ロードトリップ 5 からの続き

それから、僕達はボルドーに4時半頃について、ヨーロッパの夏は陽が長いことをいいことに、8時過ぎまで観光をし、それからフランスでは、もう慣れっこになったスリーコースを堪能した。相変わらずリーゾナブルな値段で。運転があったので、夕食の際にワインを飲めなかったのは非常に残念だったが、ボルドーの街のワインショップでメドック地方の中でもオーメドック村のワインを購入したし、もちろん、例のワイナリーでもワインは購入した。

ボルドーはフランスで、パリ、リオンに次ぐ第三都市だ。どんな街かは探せば色々出てくるだろうし、僕がここであーだこーだ書く必要はそんなに感じないので、詳しくはかかない。



ボルドー街並み




城壁に囲まれた(また城壁って言っちゃった、城はないのに)とても素敵な街だ。
僕は、ヨーロッパは有名な街から小さい町まで色んなところを訪れたが、僕が幼心で思っていたヨーロッパの街というのを、アートや歴史と居住人がリアルに体現している街だと思った。
そして、街の規模とユニークさ、食の充実、美人の比率(!)、総合点でここには住めると、心から感じた街は初めてだった。ガロンヌ川もとても良い川だ。バルセロナも海があり、食が充実していて、歴史もあり、素敵な街だ。ただ、開放感と同時に閉塞感を感じたのも事実だ。城壁に囲まれたこじんまりとしたボルドーの中心街を歩いていても逆に僕は閉塞感を感じなかった。


ボルドー昼景


ボルドーの夜景



僕らは、ボルドーから帰った翌日、ビスカロッセを後にした。南のバスク地方に向かって、130kmで平原を切り開いた道路を下った。後続車のウィンカーはもう、「どっけ」には聞こえなかった。

途中でバイヨンヌというバスク地方の比較的大き目の町に寄って、ブラブラした。昼ごはんにはトウガラシ入りのハムをさっと包んだクレープを食べた。

そして今回の旅の最終目的地、ビルバオに到着した。ビスカロッセを10時頃には出て、到着したのは、午後5時頃だ。最後におじさんが

「今日は、夏休みの初日だから、モーターウェイ(高速道路)が、すごく、混むかもしれない、あの道路をずっと行くと、モロッコまで、いけるんだ。夏休みに、合わせて、モロッコに、帰省する人が、たくさんいる。」

と言っていた。


「モロッコ?」


アフリカ大陸だ。イメージで言うと、車で大阪から福岡まで行って、フェリーに乗って韓国に入って、そこから何とか北朝鮮を抜けて中国に到着するようなもんだ。


僕は生唾を飲み込んだ。


実際のところ幸運なことに道路は混んでいなかったが、サービスエリアのようなところでは、イスラム系の人たちが、「そんな小さな車に、そんなにたくさんの人は乗れないし、そんなにたくさんの荷物は入らないよ。」と声をかけてあげたいくらいのたくさんの人とたくさんの荷物を車に詰め込んでいた。


僕は、売店で買ったコーラのボトルを半分くらい一気に飲み干した。


今回の旅は、ビルバオ空港から始まったが、ビルバオの市街には来ていなかった。
せっかくなので市街地も観光しようということで出発の前日に、ビルバオに入ったのだ。


たいていヨーロッパの歴史ある大きな街には、新市街と旧市街がある。概ね、新市街と旧市街は、川をまたぐ橋で繋がっているか、大きな道路をまたぐ横断歩道で繋がっている。

ビルバオも同様だ。新市街では、アートと建築を楽しみ、旧市街では歴史とそしてピンチョスを楽しんだ。

夜、気分がよくなり旧市街から新市街への橋を渡って、新市街のホテルへ戻ろうとした。相変わらずの僕が、「折角だから行きとは違う路で帰ろうよ。」と言ったのが間違いだった。いろんな路をあーでもない、こーでもないとグダグダほろ酔い気分で歩いていると、とんでもない通りに足を踏み入れてしまった。

ロンドンでもこんなに危険な香が漂う通りはもうないぞというくらい、通り全体が、お酒や違法なものやら、汗やら色んな臭いが蔓延し、路行く若者達は、完全にまっすぐ歩けなかったり、奇声を上げてみたり、目が明後日を見ていたり、飲み干したボトルを「2001年宇宙の旅」で初めて骨を触ってみた類人猿のようにポコポコ道路に叩きつけ、結果的に割ってみたり、なんというか非常にベーシックな事を単純に繰り返す、動物としての人間的行為で満ち溢れていた。

僕ら観光客は、場違い極まりない通りのように思えた。

その通りは結構距離が長く、通りの半分に来るまでここがとんでもない通りにみえなかったのだ。時はすでに遅し、今更引き返せないし、背を向けたくないし、観光客だなんて思われたら、鴨がネギしょってやってきたようなものだ、とスペイン人ですら思うかもしれない。


そこで僕は、来ていたシャツのボタンを3つくらい外し、ネックレスを徐にアピールし、千鳥足で大きな声を出しながら歩き出した。そして、あえて通りのど真ん中を歩き出した。端っこじゃなくて。変なアジア人だと思って、きゃつらが獣のような目で僕を見る。しかし、寄ってはこない。こっちを見ながらにんまり笑う兄ちゃんは、歯があんまりない。残っている歯はすべて金か銀に輝いている、街灯に照らされて。

僕は笑顔も返さない。それがどうしたという視線だけ与える。表情が変わらないという意味ではポーカーフェイスだが、脇が代わりに恐怖の涙を大量に流してくれている、慟哭だ。僕の全身の機能の中で一番正直なやつだ。

あるんだかないんだかわかんない覇気を一生懸命まとい、歯のない兄ちゃんをグッと睨み着けることで、血の涙を流しながらスサノオで僕とMを包んで、好奇心の目と足で僕らを少し追いかけてくる奴らもいたが、僕らは無事にその通りを抜けた。200mくらいの距離がこんなに遠いと思った事は人生で一度もなかったし、疲労感と体感時間は200m全力の匍匐前進するくらいが妥当ではないだろうか。

翌日、そして最終日は気温が40度近くまで上がり、暑さという重力がまた僕の足を機能を奪ったけれど新市街のアートを巡るウォーキングツアーに参加したり、グッゲンハイム美術館を楽しんだ。




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旅の醍醐味は、体と共に推移する精神の旅でもある。


フィジカルに地点Aから地点Bまでを移動し、目的地である地点Bで、目的としていることを実施するという行為は、旅とは言わない。 これは仕事であれば、出張と呼ばれ、人と合うのであれば、待ち合わせと呼ばれ、地点Bを学ぶのであれば、観光と呼ばれる。

僕も時々だが、出張でロンドンを離れることはある。そして、僕らは仕事柄自由時間が結構多かったりもする。特に出張の場合。例えば、撮影が1日だけだったとしても、移動日(出発)、衣装合わせ日、撮影日、移動日(帰宅)と3泊4日の出張になる。衣装合わせ日と言ったって、1日のうちの数時間だ。だから、自由な時間が結構ある。

しかし、どれだけ深呼吸をして、心を落ち着かせ、地点Bを旅するように見てみようと思っても、そうはならない。せいぜい観光になるだけだ。


今はどうかしらないけれど、僕が子供の頃は、遠足は「家に帰るまでが遠足だ」と先生によく言われた。

僕はこの意味を当時「家に帰るまで行儀良く、そして気をつけて帰るように」という意味で取っていた。おそらく先生もそういう、そういうつもりで言っていたに違いない。

しかし、本当に先生は正しい。遠足は旅だ。学校から数駅しか離れていない万博公園に遠足に行った時も、学校と同じくらいの時間をかけて駅前まで、歩き、みんなで一緒に電車に乗り、数駅で降りて辿り着く万博公園。しかも、家族や友だちとすでに何度か訪れたことのある公園なのに、この家を出発する瞬間から家に到着するその瞬間までがちゃんと旅として成立するのだ。

旅とは身体が伴った心積もりでもある。地点Aから地点Bの移動が、精神の推移をプラスすることによって、旅になる。


今回の僕らの旅は、色んな出来事があったが、それはそれぞれの出来事をどのように捉えるかによって変わってくる。もちろん、出来事の中でもその後に与える影響力の度合いは異なる。

もし、カーナビ付きの車でなかったら、どんな旅になっていたかなんて想像もつかない。後続車に「どっけ、お前、どっけ」と言われていると最初から思わなかったとしても、この旅がどのように変わっていたのかだって想像もつかない。その時々の出来事は多かれ少なかれ何かの形で必ず、その後の自分に影響を与える。


西向きのバルコニーの植物達は、夏に花が咲き出すと、茎がさらに太陽を受ける西側に向けてぐんぐん育っていく。そして、花がまだ蕾だった頃とはまったく違う方向に向かって伸びていく。

日々少しずつだが、夏の終わり頃には、かなり違う方向を向いている。日々でわからないことが月単位では確実に違いとなって現れる。


それを僕は傍観する。月単位かけて。


普段から体と心に対して真摯にそして丁寧に向き合っていると、僕らも傍観者になることはできる。

そして、傍観者の視点から自分が経験する旅をふりかえってみることも可能になる。

傍観者になってみると、どんな出来事が起こったとしても、それは旅の一つの出来事だとして受け入れることができる。特にこの忙しい世の中で、許された(限られた)時間をふんだんにかけて丁寧に、地点Bの下調べをして、自分の旅の予定を組むことができる。


しかし一度、産み落とされた予定は、産声をあげた瞬間、きちんとその役割を遂行しなければならない期待を僕らから一心に受ける。そして、僕らはその期待が裏切られると、個人差はあるけれど、絶望する。そして、傍観者でなくなる。



ボルドーからビスカロッセに車を走らせていた帰り道。車のライトを通常からハイビームに切り替えないと、林道は暗すぎて、見えなかった。対向車が来る旅に、ハイビームから通常ライトに切り替える。一度、その切り替えがうまくいかず車のライトが完全に消えてしまった。Mも僕も「あ」と言ったが、僕はその後何も言わず、林道に車をとめた。車のエンジンを切るが、ハザードライトは残して、車の外に出る。少し生暖かい風が、頬を撫でる。


時々、走り去る車と、ハザードライトの音以外、世界には何も存在しなかった。暗闇の中、見上げた空に広がる星々の光は、遠くから、とても遠くから、ここまで届いている。しばらく僕は瞬きも忘れ、呆然と空を見上げた後、しっかりと目をつぶり大きく息を吸い込んだ。僕の瞼の裏には、ちゃんと宇宙の星々がまだそこにあった。



あくまでも個人的に、傍観者でいることが旅には必要なのだ。


自分の呼吸を聞けば聞くほど、人の声も世界の音が聞こえてくるように。


僕らがどこへ行ったとしても、世界は必ずそこにしかない物語で語りかけてくる。


それを聞くことができるか、できないかは、僕ら次第なんだから。



世界は必ずそこにしかない物語で語りかけてくる。





「僕は、元気でやってるよ。」

「みんなも、元気でやってけよ。」






ロードトリップ 完



- 2 Comments

N  

road trip

Hello,
I've been reading your blog recently and enjoying it as I love road trip myself.
The idea of traveling without satnav caught me actually.
That's mad especially you are in the country you are not live in but I liked it.
Also, I had a same experience with you about kronenbourg(red tin) and 1664.
It was confusing.

I should explain about myself a bit more that's how I feel commenting on your blog.

I live in Yorkshire.
I'm married to Yorkshire man, have two kids.
Me and my husband's been traveling around UK and Europe in a kit car called Westfield with friends every summer.
The car has no roof and not much space but we love the idea of the road trip using the car that is not ideal for it.
We must be M.

Hearing the motorway in Spain leads to Morocco blew me away.
One day we'd love to drive the road.
I always amused we can actually cross between countries on land with no fuss
Not even that we don't notice we're in different county.

Anyway if you see a bunch of Westfield traveling in Europe or UK they might be one of us.

I know you are an actor not a car enthusiast but I really enjoyed reading your road trip.

Bye for now


2016/10/22 (Sat) 20:04 | EDIT | REPLY |   

Leo  

Re: road trip

N-san

Thank you for your comment. A road trip always has a story and it's very unique. I'm glad you enjoyed reading my version of the road trip. I'm sure your story is as unique and interesting as mine. We all are travellers of our own life. Let's make the most of it!

Leo

> Hello,
> I've been reading your blog recently and enjoying it as I love road trip myself.
> The idea of traveling without satnav caught me actually.
> That's mad especially you are in the country you are not live in but I liked it.
> Also, I had a same experience with you about kronenbourg(red tin) and 1664.
> It was confusing.
>
> I should explain about myself a bit more that's how I feel commenting on your blog.
>
> I live in Yorkshire.
> I'm married to Yorkshire man, have two kids.
> Me and my husband's been traveling around UK and Europe in a kit car called Westfield with friends every summer.
> The car has no roof and not much space but we love the idea of the road trip using the car that is not ideal for it.
> We must be M.
>
> Hearing the motorway in Spain leads to Morocco blew me away.
> One day we'd love to drive the road.
> I always amused we can actually cross between countries on land with no fuss
> Not even that we don't notice we're in different county.
>
> Anyway if you see a bunch of Westfield traveling in Europe or UK they might be one of us.
>
> I know you are an actor not a car enthusiast but I really enjoyed reading your road trip.
>
> Bye for now

2016/11/26 (Sat) 18:08 | EDIT | REPLY |   

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