Leo Ashizawaの「元気でやってるよ。」「元気でやってけよ。」

自分がやりたいことを少しでも伝えるには、自分自身の中でそれなりに土台が必要です。僕の土台はこのメッセージ。これまでお世話になった人へ。これからお世話になるであろう人へ。ロンドンで活動する役者、Leo Ashizawaからの便り。

それぞれの一日

恒例の月一更新です。みなさん、お元気ですか?葦沢リオです。

夏真っ盛り、ロンドンもようやく夏到来で、これでもかというくらい公園で、日光浴を楽しんでいる人が増えてきた。

僕の家は歩いて1、2分の距離にテムズ川がある。テムズ川は昔頻繁に氾濫していた川だから、テムズバリアで水量を調節しているため、水位が2、3メートルほど変わる。水量が少ないと少し寂しい気持ちになるし、水量が多いと満ち足りた気持ちになる。眺めているだけで気分がとっても変わる。僕の散歩道。

特定の目的地もなく、身体をただ単純に前に向かって動かす散歩という歩く行為はどこかで瞑想に似ていて、あてどもなく歩く、このあてどもない行為は、あてどもない思考を心地よくサポートしてくれる。

今日も天気がよかったので歩いた。



来週で、1ヶ月ほどかかった撮影が終了する。1ヶ月といっても、その間数日間だけなので(長編映画にしては、日数少なかったなぁ。)、大事ではないんだけれど、末期疾患を患ったキャラクターだっただけに、体重を落としたり、なんだかんだで思考を奪われていた分、ようやくゆっくりできるかなってホッとする。もちろん、撮影が終る足音が聞こえてくるとやっぱりどこかでしんみりしてしまうんだけど。

それにスタッフさん、特にメイクさんには迷惑をかけた。

本当は7月上旬に撮影が終わり、そのあとにビ、ビ、ビーチホリデーに(はじめての!)行く予定だったものの、スケジュールの都合上、ホリデーの後にも撮影をしないといけなかったので、ビフォア・アフターが繋がらないところをメイクさんに必要以上に助けてもらった。


「ニック(監督)、俺さ、めっさ焼けるよ。白人の人が想像できるレベルじゃないくらい焼けるよ。本当にいいの?」

「大丈夫、大丈夫。ちゃんとメイクでカバーするから。」


プロフェッショナルじゃないとか申し訳ないとか色々考えたけど、やっぱりこればっかりはどーしようもない。日焼け止めぬってもたがが知れてるし。

案の定、こんがり焼けて、女優さんには「黒っ!」って言われたもんね。


そうなのさ、小さい時からよく海に行っていた僕の太陽光吸収量は半端ないのだ。



人生初のビ、ビ、ビーチホリデーは、スペイン領のカナリア諸島、ランザローテ島。スペイン領といいつつも、大西洋に浮かぶアフリカ大陸から近いカナリア諸島。太陽が痛い。眩しい、そしてとても夏い。


泊まったホテルでは、ハーフボードという朝食と夕食付き、毎朝、スペイン版オムレツ、トルティーヤを食べる。ピザのトッピングのように、刻んだハム、パプリカ、玉ねぎ、マッシュルーム、チーズ、トマトが並んでいる。

シェフのおじさんにオーダーをして、その場で作ってもらう。

全入れでお願いすると、とっても陽気に「イェーイ、ランザローテ、ランザローテ」と歌いながら作ってくれる。当たりが出た時の自動販売機みたいに賑やかだ。それでも時間はまだ朝の9時。飲み放題セクションに、CAVA(スペインのスパークリングワイン)が置いてある。初日の朝から、真っ青な空と真っ白なホテルに照り返す太陽は眩しい。

すでに朝食を食べ終えて、2階建しかないビレッジのようなロッジ群に囲まれた中心のプールで、日光浴をしながら本を読んだり、身体を焼いている紳士淑女もたくさんいる。



「うん。ホリデーだ。」



ランザローテ島は、そもそも火山が隆起してできた島だ。北海道とちょうど同じくらいの大きさで、ビーチもほとんどが黒い。関東のビーチよりもっと黒い。僕らはPlaya Blancaという白いビーチを選んだんだけど。だって、はじめてのビーチホリデーは、白がいいじゃん!

そんな厳しい土壌のため、ほとんどの食材が輸入品だ。カナリアポテトとバナナ(モンキーバナナより小さいバナナはじめて見た。)以外は、何も取れない。もちろん、魚は豊富だ。さらに・・・ワインが有名だ。


スペイン本国を合わせても1、2を争うくらい古いワイナリーがある。El Grifo、グリフォンを冠したワイナリー。その他にもこれでもかというくらいたくさんのワイナリーがある。ランザローテのワインは、スペインワインの奥行きよりも、もうすこし、スカーッとしたイタリアワインの陽気さがあるにもかかわらず、しっかりとした深みが最後に追いかけてくる。いやー、うまい。
特別な時に飲むために、それぞれのワイナリーから一本ずつワインを購入する。ランザローテのワイナリーでは高くないけれど、おそらくイギリスではかなりの値段がするだろうし、それにそもそも売ってすらいないワインもたくさんある。そんな時僕はいつも、自分だけの宝物を見つけ大切に持ち帰る子供のようにニンマリする。


移動は車。見渡す限り、何もない赤茶けた山と黒い砂漠。もし、ここが実は火星だよっていきなりいわれたとしても、僕が持っている火星のイメージと照らし合わせても遜色がないくらい。すんごい月並みな表現だけど。

ひろいっ


ラクダに乗って国立公園の外周をすこし回る。国立公園といっても、緑はない。壊滅的なくらい真っ黒だ。活火山の周りをカッチコチに固まった溶岩がうねるように、支配している。国立公園内のツアーは50人くらいが乗れる大型バスだ。道は狭い。人外の場所に紙一重でささやかな道を作った程度だから行き違いは絶対にできないし、「おいおいそんなスピードで走ってハンドル切りちがえたら、この崖から真っ逆さまだぞ。」の環境だ。

鼻歌を歌いながら運転するドライバー。

また、あの歌だ。「ランザローテ、ランザローテ。」

僕でも歌える。



見渡す限りの赤黒い土地を観光して、真っ白いビーチで身体を休める。



だいたい僕は旅行先でその土地のビールを飲むと、地に足がついた気がする。一つの儀式だ。それに飛行機に乗る前にも禊のビール。(Facebookをご覧いただいている方はわかると思うけれど。)ビーチを眺めながら、ビールを飲んで、太陽で身体を焦がしながらボーッとする。

ボーッとするというと、まぁ、ボーッとすることを想像してもらえると思うが、ここでいうボーッというのは、脳みそがとけて、耳からポタポタ落ちてくる音が聞こえるんじゃないかというくらいのボーッだ。

旅行に行っても観光するとそれなりに、入ってくる情報を頭の中で処理する。それで、何かしら考える。職業柄、常にまぁ、頭は活発な状態だから、旅行にいっても、「あー、なるほど面白い」ていう思考が自動的に働く。


でもね、でもね、このボーッは文字通り、頭が空っぽになるまでボーッとなる。考えたくても何も考えられない。



「頭空っぽの方が夢詰め込める。」



かの有名なドラゴンボールの主題歌の一節だ。


非常に正しい。


そんなランザローテのホリデー中に昔一緒に働いていたロンドンの弟から連絡があった(もう日本に帰ってしまっているけど)。


「ロンドンにいるので、時間が会えば会いましょう」


彼は、釣り師だ。アングラーっていうのかな。今は、インディペンデントの釣り竿メーカーをサポートしているフリーランサーだ。



そういえば、僕は彼が日本に戻ってから釣りを一度もしていない。小さいときからずっと趣味で続けていた釣り熱をいこらせてくれたのも、彼だ。ロンドンに彼がいる間は結構一緒に釣りに行った。彼がいなくなってからロンドンで釣りをしなくなったのには、理由がある。それはここではあまり関係ないから言わないけれど。



「時間があったら釣りでもいきましょう。」



ロンドンに戻ってきて、彼と一晩飲み明かした後、数時間の睡眠で釣りに出かける。少し酒が残っているけれど、眼がぱっちり覚め、胃のあたりにザラついた感覚が残る早朝の朝は久しぶりだ。懐かしい。


彼が日本に帰ったときからまったく変わっていない選択肢のない僕の釣り装備の中から選りすぐりのルアーを一生懸命選んでくれた。



忘れていたワクワク感が川を見ると蘇ってくる。

何投目かで、さっそく大きなあたりがくる。

文句無しで個人レコードのパーチ、42cm。



42cmパーチ

この写真を見て思うけど、こんな笑顔自分でも久しぶりに見たと思う。


この日もとても天気がよく、少しずつ公園に人が集まり出す。僕らが釣っていた川&運河は、公園を綺麗に囲んでいる。ランザローテは、陸がプールを囲んでいたから、真逆だな、なんて思う。

僕らしか釣り人はいなかったので、何か釣るたびに土地の人たちが「そんな大きな魚がこんな川にいるのか」と寄ってくる。

イギリスのとても短い夏には贅沢なほどの天気だ。

色んな人たちが、それぞれ1日を楽しんでいる。


何故か突っ立ったまま、本を読む綺麗に禿げ上がったおじさん。太陽の光が痛そうだ。

人が通る道のすぐそばの芝生にうつ伏せになりながら、砂埃をかぶりながら、まったりと本を読んでいる80歳にもなろうかというおばあさん。なんでその場所を選んだのかまったくわからない。


おそらくみんな、頭を空っぽにしているのだ。


みんながそれぞれの1日を楽しんでいる。


僕はそんな人たちを尻目に水の中を想像しながら、ルアーを投げ、まく。それを繰り返す。釣るという目的以外はあてどもない失われた方向性と身体の動きは散歩に似ている、と思う。


体重を落としている最中だったけど、特例で川沿いのパブでビーフバーガーとクラフトビールを頼む。アメリカ発のクラフトビールも最近ロンドンで流行っている。僕も彼もグリニッジ近郊で醸造しているミーンタイムを頼んだ。疲労を洗い流すようにバーガーとビールが身体の中に入り込んでくる。それから、次はどこへ行くやら、日が上がって魚の活性が落ちた時間帯をどう釣るかの話に盛り上がる。

さすがの彼は、本人レコードタイのパイク98cmをその後釣り上げた

いい年をした大人が、魚に一喜一憂する。
僕たちも、他の人たちからすると、楽しんでいる1日に見えただろう。

人それぞれのユニークな手段として。



朝5時半頃に家を出て、夕方の5時半頃に家に戻った。


帰りの電車の中で僕は言った。



「とっておきの良いワインがあるから、開けよう。それと、サラダとチーズとプロッシュートハムを摘みながら、今日一日を飲もう。」



ごめん、体重落としてるから炭水化物は食べれないんだ。



舞台や撮影期間が気がつけば、あっという間におわってしまっても、その余韻はいつもとても長く僕に残る。

良くも悪くもその余韻を取り除くためにも、何かしらの儀式が必要になってくる。その儀式がどのような類のものであっても、必要なものは、頭を空っぽにすることだ。

ロンドンの夏はあっという間に過ぎてしまう。一方で日没は、かなりの期間遅い。夏が終わっても、8時、9時まで明るいロンドンは、その感覚に少し似ている。そして、1日を楽しむそれぞれの人たちは、どんな職業であれ、同じものを求めている。


それを傍観者のように、なんともなく眺めているのがロンドンなんだと思う。


「僕は元気でやってるよ。」

「皆も元気でやってけよ。」


ワイナリー


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