Leo Ashizawaの「元気でやってるよ。」「元気でやってけよ。」

自分がやりたいことを少しでも伝えるには、自分自身の中でそれなりに土台が必要です。僕の土台はこのメッセージ。これまでお世話になった人へ。これからお世話になるであろう人へ。ロンドンで活動する役者、Leo Ashizawaからの便り。

ロードトリップ1

ご無沙汰してます。葦沢リオです。またまた、前回のブログから結構時間が経ってしまいました。
みなさん、お元気ですか?

2ヶ月かぁ・・・。あっという間に過ぎた気がするけれど、振り返ってみると色んなことがあったなぁ。

前回ブログを書いてから6日後にやっぱりイギリスはEU離脱を決めてしまった。結局、例の「何者か」は、僕が思っていたよりも大勢のところに出没し、そしてわからないように、わからないように、口に手をあてて遠慮しがちに、それでも突き刺さるように丁寧に、何者かにとって正しいと思うことをたくさんの人の潜在意識に囁いた。そして、たくさんの人たちはそれがあたかも自分の意見であるかのように決断した。

何者かだけでなく、EU離脱を引っ張っていた政治家たちは、それが成し遂げられると自分の仕事は終わったと、去って行った。一番大切な仕事を他人に残して英雄気取りで。後ろ姿にあたる太陽の光から伸びる影は、まさに何者か、そのものだった。

そしてその何者かは、自分のアプローチが正しかったことを知り、今度は世界中に飛び立っていった。日本にもたどり着いたし、ヨーロッパにも少しずつ手こずってはいるけれど、その手を伸ばしている。さらに顕著にアメリカで何者かは、大活躍している。

一悶着があったオリンピックも始まれば、世界中を盛り上げながら、たくさんのドラマを生み出して、そしてもう終わろうとしている。

近頃僕にとっての時間は、自分の身をその中に沈めるととても早く流れ、一歩引いて外から眺めてみるとまるで、まったく流れてはいないように見える。たくさんの出来事が所狭しと、流れを邪魔しダムのように塞き止めている。どちらにせよ概念的なことが、だけど。

EU離脱国民投票があった2週間後僕は海外旅行に出た。少し早い夏休みだ。スペインとフランスのバスク地方とビスカロッセという大西洋に面したビーチ、さらにボルドー近郊だ。国民投票数日前に、M氏が僕に言った。

「念のためにさ、ポンドをユーロに換金しておかない?もし離脱したら、為替がかわるよ。」

僕は永住権はあるが、国籍はないので投票はできない。できるものならしたいのに。

「いや、変えないでおこう。離脱したら損するし、残留したら、そのまま為替はそのままなんだろうから。」

「これが俺なりの投票だ!」


有無を言わせなかった。


そして開票が始まった夜10時頃から、2時頃まで開票をおいかけ、うたた寝した後、4時頃にテレビをつけて愕然とした。それ以降はみなさんも知っての通りだ。

M氏は眠い目をパチパチさせながら、いつもの時間に起きてきた。

僕は一言「離脱だ。」

パチパチさせていた目を大きく見開いて、そしてゆっくりと自分のパソコンを開き、為替を確認して言った。

「ほらね。」

結局僕らは為替で結構損した。リアルに旅行での贅沢気分がかわるくらい。
6月末、僕は何者かに抗いつつも、いきなり後ろから足をひっかけられて・・・こけた。




とはいえ、せっかくの夏休みだ。気分を取り直して、レッツゴーだ。




今回の旅行は、スペインのビルバオ空港に到着し、そこから車を借りて、ドノスティア・サン・セバスチャンで3泊、そこからスペインとフランスのバスク地方にある村を回りながら北上し、フランスの西海岸ヨーロッパで一番大きなピラ砂丘の近郊のビーチ、ビスカロッセに3泊し、ボルドーまで足を運んだりした後、ビルバオまで戻ってくるというロードトリップを予定していた。

予算に限りもあったので、オートマの車を借りる分(イギリスは日本と同じ左側通行だけど、ヨーロッパは右側通行だ。それに右手でミッションギアを使い、さらに右側通行は、それも普段全く運転しないのに・・・ってのはしんどいじゃん。)、カーナビ付きではなく、アナログにロードマップで旅に出ることにした。ロードマップ片手にロードトリップなんてまさに、旅じゃないか。なんてテンションをあげながら。

ロンドンの空港で恒例の禊をすまし(いっつもビール飲むの。何時だって関係なく)、ビルバオの空港に到着すると、レンタカー受付に向かった。標識や聞こえてくる声が英語ではない。スペイン語はわからないけど、ここはスペインだからみんなスペイン語を喋ってるんだろうけど、英語以外の言語が耳に入ってくると、にんまりする。ここは、別のところだって。

カウンターの親切なお姉さんは、「今だったら特別でグレードアップした車がありますよ、それもリーゾナブルな値段で。」とありがちなオファーをしてくる。僕もM氏も車のクオリティー、そしてさらにカーナビがついていることに心が揺れる。

一度、旅行の流れに身を任せると、財布は緩くなるのだ。



伝家の宝刀「せっかくだから」



がジャケットをめくると腰のところにキラキラ光っている。柄の部分の装飾をあまくみてはいけない。かなり魅力的だし、隙あらば触りたくなる。それを何度も何度もさすりながら、


「え、どうする?どうする?」
「なんだかんだで、カーナビは魅力的だよね」


いきなり、ロードマップ&ロードトリップの計画を崩すような意見が飛び出した。


カウンターのお姉さんは日本語なんて話せないけれど、確実に僕たちが何を言っていたのかわかったのだろう。

芝居で間をとったり、沈黙にのっかることは、恐ろしかったりすることがあるのに、こういうときは、関係ないのだろう。

おそらく、そこいらに漂う空気を感じ取ったお姉さんが「カーナビが欲しいんだったら、今の値段のままでカーナビ付きの車に空きがあるかみてあげるから。」と言ってくれた。

僕は満面の笑みでお礼を言う。カウンターのお姉さんからは後光が出ている気がした。

結局僕らは、自分たちで予約していたよりもグレードアップされたカーナビ付きの車に変更してもらった。それもフリーで。これが大正解だった。ロードマップではこの旅は絶対に無理だったと思う。町を、村を、そして田舎道を走ってみて本当にそう思った。単純に道の名前も標識も何もない場所がえげつないくらいたくさんあった。

「二人ともカーナビがあってよかった。」と心から思ったことが、
田舎で見る天の川の満天の星数くらいたくさんあった。

よく言えば、前もって予約したり、プランすることで費用が安くつく、でも悪くいうと、融通が利かない。ロードマップを片手にロードトリップというのは、興味はあるし、機会があればやってみたいと思うけど、ぶらり予定なし旅くらいの勢いでないと無理だってことがよくわかった。結局この旅は、とても忙しかったから。

ドノスティア・サン・セバスチャンへ向かう道すがら、ゲタリアという町に寄ろうと思った。でも、駐車場を逃し、海岸沿いをかなりUターンできないまま走り、結局次の町、サラウツにたどり着いてしまった。もう、戻る気もない。というわけで町を散策、なーんていうこともあった。もし、ロードマップだったら、そんな余裕もなかったろう、ありがとう、カーナビ。


サン・セバスチャンは、バスク地方と呼ばれるスペインとフランスにまたがる地域で、美食の街として知られ、文化面でも秋に開催される国際映画祭がとても有名だ。バスクは独自の言語も持っている。歴史的には、とても古く、そしてその言語を今でのきちんと保存しようとしている。

よく利用するレコーディングスタジオのスタッフでアイスランド人が、アイスランドは、言語をとても大切にしているから、外来語もすべてちゃんとアイスランド語を作るって話を昔していた。
だから、たとえばコンピューターとかインターネットとかおそらくは、ほとんどの国でそのまま使われているであろう言葉もちゃーんと輸入するときに、自国語を作るらしい。人口33万人しかいないということは、言語もほぼそれだけの人数にしか使われていないということだから、大切にしているんだろう。そんなことをバスクの話を聞きながら思っていた。

例にももれず、イングランドはサン・セバスチャンを守るという嘘をつき街に入り、街を焼き払ったらしい。8月31日という名の通りが旧市街にあるのだが、そこが唯一古い街並みが残っている通りで、さらに有名なバルも並んでる。

ビーチがあり、
さんせばすちゃんびーち


景色がよく、
けしきがいい


ワインがうまい(Riojaリオハが近いからハウスワインは基本リオハ)。
わいんがうまいサンセバスチャン


大阪の串カツ屋さんのように、立ち食いでピンチョス(他のスペイン地方ではタパスと呼ばれる)という、小皿で食事をしながら酒を飲む。店によって特産があるから、それをつまんだら、また違う店に移る。
めしもさいこーサンセバスチャン


日本人の観光客も多いみたいで、日本語メニューがあったりする店もある。


食事のためにお酒があり、お酒のために食事があり、そしてそれを人間関係が優しく包んでいる。酔っ払って、暴れているのは、外国人(おそらくイギリス人だろう)だけだ。お酒が食事から独立してしまっている文化というのは、可哀想だ。

イギリスの名産エールビールなんて、あれを食事と楽しもうと思うと、それこそピンチョスのような小皿がいっぱいいる。コース料理なんで、絶対無理だし、ワンプレートのパブ料理でも、せっかくの料理なのに、ビールがお腹を邪魔する。だからってビールばっかりとかお酒ばっかりを飲んでると、悪い酔いするからね。酔っ払いたいから飲むのは、イギリス人の酒文化かな。東欧はよく知らないけど、少なくとも国産ワインがある国はそれは少ない。

小さい旧市街はすぐ歩いてしまえる、バスクらしい、ちょっと棘のある可愛らしい(まるで姉に嫉妬する妹のような)フォントがとても印象的だ。

フォントがかわいいんだ。サンセバスチャン

レストランで働くのは基本男たち、そして、家でもキッチンは男の場所らしい。まるで、工事現場で働いているような豪快な男たちが、豪快に大きな手で小さなピンチョスの爪楊枝をつまみ、お皿に乗せてくれる。そして、チャコリという微炭酸の白ワインを、「珈琲屋」のフィルターコーヒーの3倍くらい上空から、溢れても構わない勢いで注ぐ。どうやら香りがたつらしい。グラスは、気取ったワイングラスではなく、普通のコップグラスだ。

インターネットや観光案内で綺麗に切り取られた写真や煌びやかな映画際の風景とはうってかわって、そこにあるのは、観光地でありつつも、その場で生きる人たちの、その日のそこでの楽しみのようだった。


つづく。

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