Leo Ashizawaの「元気でやってるよ。」「元気でやってけよ。」

自分がやりたいことを少しでも伝えるには、自分自身の中でそれなりに土台が必要です。僕の土台はこのメッセージ。これまでお世話になった人へ。これからお世話になるであろう人へ。ロンドンで活動する役者、Leo Ashizawaからの便り。

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ロードトリップ 2

ロードトリップ1からの続き

3泊4日のサン・セバスチャンでは(もう、ドノスティア・サン・セバスチャンって書くのしんどくなってきた。ちなみにドノスティアは、バスク語でサンセバスチャンという意味だ。だから、バスク語もわかる人が見たら、サン・セバスチャン・サン・セバスチャンだ。盛り上がりまくりだ。)、もうこれ以上入らないというくらいたらふくのピンチョスを腹に入れ込んだし、町をブラブラしてビーチでのんびりもしたし、ビスケー湾の真珠とよばれる絶景を見ながら、20世紀始めにできた化石のような遊園地で、シートベルトもないクセになかなかスピードがでるミニジェットコースターにも乗った。手には、常にビールかワインを持って。これぞ、ザ・ホリデーだ。



そんなサン・セバスチャンを後にし、僕らはビスカロッセに向かった。まっすぐ向かって200kmくらいの道のりだ。



ただ、少し寄り道になるけれど、その方角にも可愛らしいバスクの町がたくさんある。

寄らないわけにはいかないということで、その中からいくつかをピックアップした。




僕らは、まずサンセバスチャンから一番近いサン・ジャンド・リュズという町に寄ることにした。ここは、すでにフランスだ。


日本という島国出身で、さらに今住んでいるイギリスも島国だから、道路を走っていると国を跨ぐことができるという感覚にはなかなか慣れない。


スペイン語がまったくしゃべれないなりに料金所では「オラー(こんにちは)」「グラシアス(ありがとう)」と言うのにようやくなれていたところなのに、ある料金所で「オラー」と言うと「ボンジュール(こんにちは)」とフランス語で返された。


脳みそをピンセットで引っ張られるような感覚に陥って、思った。


あぁ、そうか。ここはフランスなのか。


まぁ、とにかくこのフランス国バスク地域サン・ジャンド・リュズという町は、マカロンっていうカラフルなミニバーガーみたいなスイーツ発祥で、なにやら有名な布地もあるのだ。

駐車場を見つけるのに、小さいラウンド・アバウト(ロータリー?)をグルグルなんども回り(パリのエッフェル塔を回る車を想像して、それを100倍くらい小さくしてくれたらいい。)、こんなシーンが「ミスター・ビーン」にもあったなと思った。車はミニじゃないけど、色は似ていたような気がする。

そうして、ようやく見つけた駐車場では、どうやってメーターを使用して駐車場代を払えばよいかわからなかった。前払いで時間を決めなきゃいけないようだ。英語表記もちゃんと機能していない。僕らがメーターの前でごそごそしているので、他に駐車場代を支払いたい人たちが溜まってくる。



こういう時は、「わ・か・ら・な・い」という顔をすれば、だいたい通じる。これは英語以上に万国共通だ。

まるで、天石盾だ。いや、八咫鏡だ。伝家の宝刀が十拳剣だとすると。これで僕のスサノオは、攻守無敵になる。



血の涙を流したくないから瞼を感じながら、しっかり目をつぶり、スサノオをいったん消して、ある程度言語で説明しなきゃいけない。ここは、小さな町であまり英語が通じない。バスク地方なだけあってスペイン語はいけるようだけど。

一生懸命、色んな言い方で説明してみるも結局僕がしゃべっているのは、英語だ。そして親切に助けようとしてくれている人たちは、フランス人だ。





M氏に言われた。
「あのさ、なんでそんなおもいっきり日本語訛りの英語しゃべるの?」



「え?そう?」
と僕。



「逆に理解しにくいんじゃない?」



「え?そう?」
と僕。何かちょっと癇に障るから、もう「氏」をつけてやんない。



さらに、Mは続ける。



「訛りが強いほうが英語しゃべらない人にはわかりにくいでしょう。」



「え?そう?」
と僕。誤解しないで欲しいけど、僕の英語にもちろん訛りはある。

ただ、相手にわかってもらおうとすればするほど、日本語訛りが強くなるらしい。なんてこった。


でも、どういう思考回路でそんなことになっているのかわからない。こういうのがわからなかったり、わからないままにしておくことを職業柄、僕は好まない。

確かに何となく自分でも訛りが強くなっているような気はしていただけれど、なんてこった、気には留めてなかった。芝居で訛りを自然にものすごく強くするのはとっても苦労するもんなのに。


脳みそをピンセットで摘まれたせいかもしれない。いや、すでにレードルで掬われた感じだ。鈍痛として響いてくる。


頭の中でそんなことをグルグル考えつつ、まわりから見ると、崖の上から一点を見つめながらジーっとしていた魔人ブウのように、僕も一点を集中して見ていただけど、結局「ブロークン」という言葉とX(バツ)というボディーランゲージで、駐車場のメーターが壊れていることがわかった。



僕らは恐る恐る車を駐車場に残し、他の人たちが多種多様な表情でメーターが壊れている確認をし、(ゆする人はいても、五右衛門チョップをしている人はいなかった)結局はメーターにお金を払っていないことを確認して、それでも不安を押し殺しながら町に向かって歩いた。


町に入ると、白い砂壁に少し歪で決して左右対称でない建物に、緑や青、(一番印象的な)赤の屋根や扉がついているのがたくさん見えた。
どこもかしこもそんな建物で、路もせまく路地にユニークなお店もたくさんある。石畳の隙間に所狭しと埋まっている砂を見て、ビーチが近いことがわかる。

20メートルもある狭い路地を抜けると、ビーチが広がっていた。天気も悪かったし、あまり暑くなかったから人はまばらにしかいなかった。潮が引いていて、海辺まで少し距離がある。それに身体を包む湿気が、日本の雨がふる直前の夏の曇り空を思い出させる。迷った挙句眺めるだけで、僕らはビーチから退散した。

小さな金髪の子供が、驚きと興味が極限まで達したような表情で、目を開ききって僕らをみている。僕は、もう少しで、「そんなに無理やり目を開けようとすると、目玉が落ちちゃうよ」と日本語訛りが強い英語で言ってやろうと思ったが、短い息を吐いて、やめることにした。

サンジャンドリュズ2

サンジャンドリュズ1



僕らはリーゾナブルな値段で、昼食を食べた後次の目的地、サーレという町に向かった。



ところで、サン・ジャンド・リュズで食べた昼食はまずまずだった。最初に注文を伺いに来たスタッフは英語を話せないので、別のスタッフに代わったにも関わらず、しきりにそのスタッフが僕らのところに来て、話かけてくる。それもフランス語で。「申し訳ないが、フランス語はわからない。」と英語でしかいえない。

やはり、旅行先の国の言語は、学んでおくべきだ。でも、昔ゴッホの墓があるフランスのオー・ベール・シュル・オワーズというところに一人旅でたどり着いた時に、当時少しだけ勉強していたフランス語で対応したら、マシンガンのようにフランス語で返答されたことがある。何を言っているかなんてまったくわからなかったから、英語で「わからない」と返答した。その時は、まだ八咫鏡はもっていなかった。

結局自分が少し言葉を知っていて何かを言えても、聞けなければ、グローブがないのにかなり離れた距離で硬式ボールで、キャッチボールをするようなものだ。飛んでくるボールなんて、痛くてキャッチできたもんじゃない。そこいらに落ちているものを拾って何とかそれで衝撃を受けて、ボールを自分の周りに落とした上で取ることしかできない。

今回は、料理のメニューがとても役に立った。そうやって次々に飛んでくるボールをメニューで受けては落とし、辛うじて拾って、遠くにいる英語を話せるスタッフにレーザービームのように投げた。三塁打なんて絶対に打たさない。
でももちろん、旅行先に国と文化に敬意を表する手段として、言語を少しくらい話せるのは大切だ。せめて挨拶くらいでも。と、改めておもった。

そして、支払いをすませた僕は、「アスタラビスタ」と胸をはって言った。カルロスがリサと慶次に言ったセリフだ。当時中学生だった僕は、このセリフをいろんなところで連発していた。実際に使ったのは、正直今回が初めてだった。

スタッフが、八咫鏡を構えていることが一目瞭然だった。そうだ、ここはフランスだ。




サン・ジャンド・リュズは大西洋に面していたけれど、サーレは山中だ、町のそばには高い山が聳えたっていて、湿度もいきなり上がる。だから、暑い。

さーれ2


「暑さは湿度だ。」と思う。イギリスにいてもからっとしているから、夏でも日陰に入って尚且つ風がふくと肌寒く感じる時だってある。

昼間温度があがっても、夜になると、温度をキープする湿度がないから、サラサラと下がってく。湿度がないのは「山がないからだ。」と思う。



日本では当たり前かもしれない山がある景色は、イギリスでは普通じゃない。


確かウェールズかスコットランドまで行かないと山はない。見渡す限り平原で、長くこちらに住むとホント山が恋しくなる。



僕らは、鼻から吸い込む湿気と山のにおいを満喫する。


さーれ1


「これだと、どれだけ吸い込んでも鼻毛は伸びなさそうだ。」
と口に出しそうになるが、折角の雰囲気を台無しにしたくないから、僕は黙っている。

(ロンドンは地下鉄を代表に空気が悪いから、鼻毛がよく伸びる。)


お土産屋さんも1件ほどしかなく、それも可愛らしい老舗ホテルに隣接している。まぁ、ホテルのお土産屋さんだ。

そこで、バスク地方特有の卍のようなマークの入ったマグカップを買う。

僕は、旅行に行くと大抵マグカップを買う。その地域に特有の何かを感じることができるカップ。家で紅茶やコーヒーを飲むときにマグカップを持つと、ふと旅行を思い出す。暖かい飲み物のおかげで、曇りガラスのように記憶が少しブラーになるけれど、そんな時間が好きだ。


Mは、置く場所がないと言って文句を言う。


家が小さくてすみませんと僕がすねる。


「このマーク、写輪眼だぜ、もうすぐ万華鏡写輪眼を開眼しそうな。」


Mは、だからなんだという顔をしている。



僕の背後からうすくスサノオが姿を現し、十拳剣がキランと脇で光る。


もちろん赤いマークのカップにした。


あいのあ2


その次の町、アイノアは、フランスで一番可愛らしい町といわれているらしい。



確かに他の町よりも、サン・ジャンド・リュズでみた、青や緑や赤の扉で微妙にずれた左右対称の建物がたくさんあり、長い通りが建物に囲まれている。観光客も町の規模に比べるとダントツでおおい。

あいのあ1

ここの駐車場は、畑のとなりだ。あわよく突っ込んでしまうくらい、突然、そしてランダムにある。


それに山登りの基点になる場所なようで、ハイジのお爺さんや、ベギラゴンを使えそうな魔術師の杖みたいなハイキングスティックを持っている人がたくさんいた。


昔は石畳でもっと、雰囲気があったんだろうけど、今はアスファルトに綺麗に舗装された道路が町のど真ん中を通っているので、車が多いのが町の雰囲気を損ねてしまっているのが残念だ。


それにしても、ここまでの道のり、カーナビがなければ絶対無理だった。僕らが買ったロードマップにはここまで詳しく道が載っていない。それに、こんな田舎なのに、「道の選択肢が少なく、ロードマップでも十分だぜ」ってこともない。何度かカーナビがあってもこれどっちという状況に陥った。その度に僕は、オレンジ色のスタッフユニフォームを着た受付のお姉さんに感謝した。


あいのあ3


一通りアイノアの町を回って駐車場に戻り、車に乗って、出発進行のポーズをとって(蒸気機関車の汽笛を鳴らすイメージ)、発進する。そして、たいがい逆走する。


特に駐車場から出るとき、他の車がなくて、車線がはっきりしないと、堂々と逆走しそうになる。そこまでややこしいのかと思うかもしれないけれど、簡単にいうと、左回りが右回りになると思ってくれればいい。逆走に気づいた瞬間、また脳みその違う部分をピンセットで摘まれた感覚になる。


まぁ、いいや。それからまた、次の町に向かって出発する。次の町は、エスプレット、トウガラシで有名な町だ。



この町も他のバスク地方の町と同じで、歪で左右対称でないけど、赤やその他の装飾で可愛らしい家がたくさん並んでいる。ただ他と違うのは、そのどの家も乾燥したトウガラシが干してある。そこで売っているパテだって、チーズだって、ピリ辛のエスプレット風味がある。コーラだって。(嘘だけどね)。地元ワインを試してけど、さすがにピリ辛ではなかった。でも旨かった。

エスプレット2


個人的には、アイノアよりもこの町の方が好きだ。それは単純に、石畳がしっかり残っていて、車よりも人が優先の区画が町の中心だから、町の雰囲気が賑やかだし、車の騒音があまり耳につかない。アイノアはこじんまりした町というより村が山に囲まれているという表現の方が正しい気がするけど。

僕らは、一通り町を回って、コーヒーを飲もうと、目ぼしいお店に入る。折角の景色を楽しみたいから、石畳の通りに面したお店を選ぶ。イギリスを離れるとこうやって、コーヒーも飲めて、ビールも飲めて雰囲気がよい場所の大切さを改めて痛感する。パブのコーヒーは美味しくないし、美味しいコーヒーを置いているところにビールはない、ロンドンではね。最近はちょっとずつ増えてきたけど。とはいえ、今日は(このときは)ビールは飲まないから、僕もコーヒーを頼む。


エスプレット3



またあまり英語の通じないスタッフで、Mは何かに「Yes」と言っていたけど、結局それはホットチョコレートだった。飲みたかったものとは違ったらしい。



僕は、町の雰囲気をコーヒーと一緒にのみ込む。サン・ジャン・ド・リュズも、サーレもアイノアもこんな感じでゆっくり出来て、町並みを愛でる区画はなかった。もし、誰かにどれか一つをオススメするとしたら、エスプレットだろう。



こういう、小さい町には、それぞれ地域性のある特別な時間が流れている。もちろん、それを観光客が気づきもせずに損ねてしまうことは多々あるけど、地元の人たちにとって、観光は大切な収入源なんだろうから、寛容ではある。



僕は、コーヒーを飲みながら思い出していた。


るーとこんな感じ



エスプレットの町の入り口あたり、駐車場付近に、チーズを並べて売っている兄ちゃんがいた。愛想のない簡易の出店で、チーズよりコーラとかスプライトとフランクフルトを売っているような雰囲気だ。



僕らを見ると、片言の日本語で話しかけてきた。



「さよなら」



会ったばっかじゃん。


僕は、Mをチラチラ実ながら、丁寧に訛りができるだけ少ない英語で、その言葉は会っていきなり使うもんということを説明した。

うまいチーズがあるから、食べてく?ここでは、トウガラシが有名だからこのチーズもトウガラシが入っている。ピリ辛が美味しいと彼は言う。



英語で、そして饒舌だ。



チーズに詳しいMがまず試してみた。どうやら美味しいらしい。僕も試してみる。美味しい。



僕の背後にスサノオが姿を現わす。その懐には十拳剣が鈍く光っている。

その伝家の宝刀の柄を握り僕は、Mに言った。


「せっかくだから」


一言言っておくが、この刀はなまくらではない。



「買う?」


Mに尋ねる。


「んー。」


Mはいつも少し考える時間がいる。ジェームズ・ボンドのMはの決断はいつも早くてシャープだ。そりゃー、局長だからだけど。エライ違いだ。


「帰るまでまだ時間があるし、ちゃんと保存できないかもしれないしな。」


僕は、それをそのまま兄ちゃんに尋ねてみる。左手の手の甲で無精ひげをこすりながら、彼は言った。別に手袋をしてチーズを触っているわけではない。だから、無意識に痒いところに手の甲が伸びるのだろう。ロンドンでこういうのを見ることは、もうあまりなくなってしまった。僕はこっちの方が好きだ。手袋をしてつくったおにぎりなんてうまくない。


「んー、それだったらやめておいた方がいいよ。美味しい状態で食べれないかもしれないから。こっちだったら(どでかい数キロあるチーズの塊)、このままの状態でずっと持つけど。・・・旅してるんだろ、じゃぁ、やめておいた方がいいよ。邪魔だから。」



人は、本当にいろんなことが見えない。見ているつもりでも本当は一切見ていない。良くも悪くも、砂漠に(もし)生えている一本の薔薇を<見ながら>ある人はたくましさ、ある人は孤独、ある人は凛々しさを感じるのだ。人の思考は忙しいから、待つことすらできない。

僕は、一瞬でも非常に下らない都会的価値観で、出店を判断し、価値観を押し付けるような色眼鏡で<兄ちゃんが話している間に>兄ちゃんを見たことをとても後悔した。



「そっか、ありがとう。」


僕は、ありがとうをメルシーボークできちんと言った。自分ができる限りの最高の発音と敬意を言葉にこめた。


兄ちゃんは僕の発音にたいしてはみかみながら、折角だからこれも試してみてよと違うチーズをくれた。


どちらもとても美味しかった。


これからどこに行くんだと聞かれたから、この町をぶらりとしたら、ビスカロッセというボルドー近くの大西洋沿いの町に行くと言った。兄ちゃんは、それは遠いな、と笑いながら濃い両眉毛を額に寄せた。

僕は、「まぁ、3時間くらいだから、9時くらいにでも到着すれば良い」と言うと、今度は右手の甲で無精ひげをこすりながら、安全な旅を祈ってくれた。



旅行先では、二種類の人たちに出会うことが多い。それは観光客に対し、かかとを上げ、つま先立ちの前傾姿勢で話してくる人たち、または、足は地面にしっかり残っているものの重心がかかとにかかっている人たちがほとんどだ。

まれに、かかともつま先もべったり地面につけて話してくる人たちがいる。極稀なその人たちに流れている時間、大地からくみあげられた何かに曝された体から生まれる気風、両手で丁寧に差し出される柔らかい言葉を通して、その土地を知ることが旅の醍醐味だということを、僕は、改めて思った。



エスプレット1


僕のコーヒーカップはもう空になっている。



それにしても、Mのホットチョコレートはまだ半分も減っていない。




つづく



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