Leo Ashizawaの「元気でやってるよ。」「元気でやってけよ。」

自分がやりたいことを少しでも伝えるには、自分自身の中でそれなりに土台が必要です。僕の土台はこのメッセージ。これまでお世話になった人へ。これからお世話になるであろう人へ。ロンドンで活動する役者、Leo Ashizawaからの便り。

僕らの想像が現実になった日③



その日も、いつものように過ぎる普通の一日のはずだった。

いつものように駅から公園にいたる通りでボール遊びをしていた。
いつものように公園や建物から溢れ出す人たちは駅に向かって歩いていた。
いつものようにそんな人ごみをうっとおしそうに眺めていた。
いつものように太陽が暮れだしたので、家に帰ろうとしていた。

いつものように・・・
特に代わり映えもなく、それでも、飽きる事もなく、楽しく遊んでいる普通の一日のはずだった。

「そろそろ帰ろかー。」
「おん、もう夕方なってもーたしなー。いこかー。」

同じ方向に帰る僕たちは、いつもマンションを通り抜けてショートカットをしながら帰っていた。
ただ、そのマンションを通り抜けるのは管理人の目を盗むことが必須だった(*注:電脳をハックするわけではない。)

その日は、多少いつもより、ボールをたくさん追いかけていた。
ボールはいったん転がりだすと止まらない。(当たり前だっつーの。)
その通りは、公園の方に向かって斜面になっているから、一度ボールがあさっての方向にいってしまうと
ぐんぐん勢いがついてしまい、こっちもとんでもないくらいダッシュしないと行けなくなる。
カリオストロの城に乗り込むルパンがロケットワイヤーを落としてしまい、拾おうと追いかけたまま加速して、じゃーーんぷ。あんなイメージ。

「今日はこっちから帰ろうや。」
「え?何で?」
「別に、何か面倒くさい。あのじじぃの相手すんの。」
「坂道走りすぎて疲れたんか?」
「そういうわけちゃうけど、あんま時間かわらんしええやん。」

そう、時間にして5分変わるか変わらないかくらい。まぁ、少年には実際、時間なんて関係ない。

「わかったわ。ええで。」
「んならあっちの階段からいこかー。」
「おん。」

その日そこまでは、いつもと同じはずだった。
ただ、いつものと違う道を帰っただけだった。

5分くらいの差


ただ、その5分の差が僕を大きく変えた。


通り抜けする以外に家に帰るには駅前に出る階段を上がる階段が2箇所。そこを通るくらいだ。(他にも方法はあるが、公園を迂回したりなどなど、さすがに途方になる。)
一つは家から遠い方、もう一つは家に近い方。
もちろん家に近い方を選んだ僕ら。

その階段は細いわき道にあって、30か40段くらいの幅の狭い階段だ。
両脇は緑に囲まれていて、マンションの住人しかそこはほとんど使わないであろう階段だった。


「おーい、はよこいや。先行くぞ~。」
そういいながら僕は階段半ばで振り向いた。


「わかってるって」

そう、友達は言ったんだと思う。

たぶん。

僕に友達の返事は聞こえていなかった。

ちょっと目線を下におろせば友達の姿は見えたんだろうけど
僕の眼にも友達はまったく映っていなかった。


おそらく、無視する僕に対して、友達もしばらくは首をかしげるものの
すぐにそれがどうしてか気がついたのだろう。


僕に向かって何か鳴っている音が消えたから。
おそらくそれは話しかけている友達の声だったから。
その音がまったく聞こえなくなったから。



辺りからすべての音がなくなった。
風の音も聞こえなくなった。
そこに僕が立っているかもわからなくなった。


どこに僕が立っているかすらも。


僕はずっと、空の一点を見つめていた。
ずっと、ずっと。




つづく。

0 Comments

Add your comment